暗号資産を1回で売らず、少額ずつ売れば税金が安くなるのでしょうか。結論からいうと、同じ年の中で売却回数を分けても、年間の利益が同じなら所得金額は原則として変わりません。
一方、売却する年を分ければ各年の所得として別々に計算されるため、ほかの所得や控除の状況によって税負担が変わる可能性があります。ただし、価格変動や制度変更もあるため、税金だけで売却時期を決めるのは禁物です。2026年分のルールを前提に、分割利確の計算と注意点を整理します。
結論:分割利確で変わること・変わらないこと
| 売り方 | 2026年分の考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 同じ年に4回へ分けて売る | 年間利益が同じなら、所得金額は原則同じ | 回数ではなく1年間の損益を合計する |
| 12月と翌年1月に分けて売る | それぞれ別の年分として計算 | 税率・控除・相場が変わる可能性がある |
| 複数の取引所で売る | 取引所をまたいで年間損益を集計 | 1社だけの利益で申告要否を判断しない |
| 暗号資産同士を交換する | 円に換えていなくても損益計算が必要 | 手放した暗号資産の時価を確認する |
| 利益を20万円以下に抑える | 一定の給与所得者は所得税の確定申告が不要となる場合がある | 非課税枠ではなく、住民税申告が必要な場合もある |
「利確額」と「利益」は同じではありません。売却代金から、その売却分に対応する取得価額や必要経費を差し引いた金額が所得計算の基礎になります。
少しずつ売る場合の計算例
1BTCを300万円で取得し、その後1BTC=800万円のときに0.25BTCずつ4回売ったとします。手数料を省略すると、1回あたりの売却代金は200万円、対応する取得価額は75万円です。
同じ年に1BTCを一度に800万円で売った場合も、取得価額300万円を差し引いた利益は500万円です。したがって、同じ価格・同じ年・同じ数量という条件なら、4回に分けても1回で売っても年間利益は同じです。実際には各回の価格と手数料が異なるため、取引ごとの円換算額を記録します。
年をまたいで売ると、各年で別に計算する
2026年12月に利益250万円、2027年1月に利益250万円が確定した場合、2026年分と2027年分に分けて計算します。2026年中に500万円すべてを確定する場合とは、各年の給与などほかの所得、所得控除、適用制度によって最終的な税額が異なる可能性があります。
給与・副業・暗号資産の年間見込みを集計
納税資金と投資計画を分けて確保
翌年まで保有する価格変動リスクも判断
翌年へ売却を延ばせば必ず節税になるわけではありません。相場下落で売却代金が減ることもあれば、制度や本人の所得状況が変わることもあります。また、含み益のまま保有しているだけなら通常は売却益が確定しませんが、暗号資産同士の交換や商品購入は課税計算の対象になり得ます。
2026年分は総合課税。税率は利益だけでは決まらない
2026年分の個人の一般的な暗号資産取引による所得は、原則として総合課税の雑所得です。所得税率は「暗号資産の利益額」へそのまま掛けるのではなく、給与などと合算し、所得控除を差し引いた課税所得金額に応じて5%から45%の7段階で計算します。別途、復興特別所得税や個人住民税も考慮します。
そのため、「利益が500万円なら税率20%」のように利益額だけで税率を断定できません。会社員か個人事業主か、給与所得、扶養、社会保険料控除などによって結果が変わります。
「20万円以下」は非課税枠ではない
給与を1か所から受け、給与収入が2,000万円以下で年末調整済みなど一定の給与所得者は、給与・退職所得以外の所得金額の合計が20万円以下なら、原則として所得税の確定申告を要しない場合があります。これは20万円まで税金がかからない制度ではなく、一定条件で所得税の確定申告を省略できる制度です。
- 暗号資産以外の副業所得なども合計して20万円を判定する
- 医療費控除などで確定申告をする場合は、20万円以下の所得も併せて申告する
- 所得税の確定申告が不要でも、住所地で住民税の申告が必要になる場合がある
- 給与所得者以外や給与収入2,000万円超など、同じ基準を使えないケースがある
分割利確によって1回の利益を20万円以下にしても、年間合計が20万円を超えればこの判定には使えません。
2027年分以後の「特定暗号資産」は新制度の対象
2026年度税制改正の大綱では、金融商品取引業者登録簿に登録された暗号資産など一定の「特定暗号資産」を暗号資産取引業者へ譲渡等した場合、20%(所得税15%・個人住民税5%)の分離課税とする措置が示されています。適用は令和9年分(2027年分)以後の所得税です。
ただし、すべての暗号資産・すべての取引経路が自動的に対象になるわけではありません。対象銘柄、取引業者、譲渡方法、申告書類などの要件を確認する必要があります。2026年分の売却へ将来制度の20%を先取りして計算しないでください。
分割利確の前後で残す記録
- 国内外の取引所、ウォレット、DEXを含む全取引履歴
- 売却日時、数量、円換算した売却代金、手数料
- 取得数量・取得価額と、総平均法または移動平均法による単価
- 暗号資産同士の交換、決済、報酬受取の時価
- 本人名義の口座・ウォレット間送金を示すトランザクションID
売却回数を増やすほど記録件数も増えます。取引所ごとの年間利益を足すだけではなく、保有場所をまたいだ取得価額と数量を整合させてください。
よくある質問
毎月10万円ずつ売れば確定申告は不要ですか?
売却代金や1回の利益ではなく、1年間の所得金額で判定します。毎月の利益が10万円なら年間では120万円です。ほかの所得や本人の申告条件も含めて確認します。
12月31日と1月1日に売れば、必ず税金を下げられますか?
必ずではありません。年分は分かれますが、各年の所得、控除、適用制度、売却価格によって結果が変わります。約定日時や取引所の記録も確認してください。
日本円にせず、BTCをETHへ交換しただけなら利確ではありませんか?
税務上は、BTCを時価で譲渡してETHを取得した取引として損益計算が必要になるのが一般的です。日本円の出金有無だけで判断しないでください。
参考資料
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について」
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」
- 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」
- 横浜市「市民税・県民税の申告について」
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」
- 金融庁「国会提出法案等」

この記事の監修者
村上 裕一(公認会計士・税理士)
公認会計士試験合格後、大手監査法人、メーカー経理財務、会計事務所を経て独立開業。仮想通貨・NFT・ブロックチェーンゲームを専門とする税理士として活躍。自らもSTEPNなどのブロックチェーンゲームなどをプレイし、多くの投資家の税務を支援している。
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