「払ったお金」ではなく、利益を得るために必要だった金額を整理する
取得価額と売却手数料を先に集め、PC・スマホ・通信費などは暗号資産取引に直接必要な部分を区分します。購入したものを一律に全額経費へ入れることはできません。
国税庁の「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」では、暗号資産の売却による所得は原則として雑所得(その他雑所得)に区分され、譲渡原価や売却手数料のほか、回線利用料やPC購入費も、売却のために直接必要と認められる部分に限り必要経費へ算入できると説明されています。
金額の上限ではなく、その支出が収入に対応しているか、直接必要か、私用分と明確に区分できるかで判断します。PCなどは金額によって減価償却が必要です。
暗号資産の利益と必要経費の基本
譲渡原価は、売却した暗号資産に対応する取得価額です。たとえば、BTCを複数回購入している場合、単純に最初の購入価格を使うのではなく、届け出た評価方法(総平均法または移動平均法)に沿って単価を計算します。購入代金を「PC代や通信費と同じ経費」として重ねて差し引くと、二重控除になります。
暗号資産同士の交換、暗号資産での商品購入、ガス代としての暗号資産支払いも履歴に含めます。手数料を暗号資産で支払った場合は、支払った暗号資産自体の損益確認が必要になることがあります。
仮想通貨で経費になり得るもの・ならないもの
| 支出 | 基本的な考え方 | 確認・保存するもの |
|---|---|---|
| 暗号資産の取得価額 | 譲渡原価 売却・交換した数量に対応する取得価額。通常の共通経費とは分けて計算します。 | 取得日時、数量、円換算額、評価方法、年初・年末残高 |
| 売買・送金手数料 | 売却等に直接要した手数料は対象になり得ます。購入、売却、送金のどれに対応するかを分けます。 | 取引明細、TxID、手数料通貨、円換算単価 |
| ガス代 | 交換、売却、報酬請求など、対応する取引を確認します。すべてをまとめて同じ処理にしません。 | TxID、目的、支払数量、円換算額、ツールで反映済みか |
| スマホ・通信費 | 暗号資産取引に直接必要な部分を明確に区分できる場合、その部分が対象になり得ます。 | 月別請求書、使用目的、専用回線・利用記録、按分根拠 |
| PC・モニター | 直接必要な業務用部分を確認。一定金額以上で使用期間が1年以上なら、購入年に全額ではなく減価償却が必要です。 | 領収書、購入日、使用開始日、使用割合、資産台帳 |
| 損益計算ツール | 暗号資産の所得計算に使った部分は対象になり得ます。他の資産管理や私用と共用なら区分します。 | 契約、請求書、利用期間、対象機能、利用目的 |
| 家賃・電気代 | 「自宅で取引した」だけで自動的に経費にはなりません。所得区分と、業務上直接必要な部分を明らかに区分できるかを確認します。 | 契約書、面積・使用時間、専用性、継続した按分方法 |
| 書籍・セミナー | 一般的な投資学習や趣味的支出ではなく、所得を得る活動との具体的な関係を説明できるかを確認します。 | 領収書、題名・講座内容、参加目的、対応する業務 |
| 税理士報酬 | 暗号資産所得の計算・申告に対応する部分を確認します。相続、法人、他所得を含む契約なら内訳を分けます。 | 契約書、請求書、業務内容、対象年分 |
| 所得税・住民税 | 対象外 所得税・住民税そのものは必要経費になりません。罰金や過料も対象外です。 | ほかの税金・公租公課と混同しない |
PCはいくらまで経費にできる?
PCは価格だけでなく、暗号資産取引のために直接必要な部分と、私用・他用途の部分を先に分けます。そのうえで、業務用部分について取得価額に応じた処理を確認します。
| 取得価額 | 一般的な処理 | 注意点 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 使用可能期間が1年未満のものと同様に、業務の用に供した年分の必要経費とする扱いがあります。 | 私用分まで全額計上できる意味ではありません。 |
| 10万円以上20万円未満 | 一定の要件の下で、3年間にわたり各年3分の1ずつ必要経費にする一括償却資産の扱いがあります。 | 通常の減価償却を選ぶ場合もあるため処理方針を確認します。 |
| 20万円以上 | 原則として法定耐用年数にわたり減価償却します。 | 事業に使い始めた日、償却方法、業務使用割合を記録します。 |
| 青色申告者の特例 | 一定の青色申告者は、期間・金額・年間合計額などの要件を満たす少額減価償却資産の特例を使える場合があります。 | 2026年4月以後は対象金額の基準変更があるため、取得日と最新要件を確認します。 |
上表は国税庁「減価償却のあらまし」に基づく一般的な整理です。適用できる制度は所得区分、申告方法、取得日、事業供用日などで変わります。
スマホ代・通信費の按分方法
「毎日チャートを見るから50%」のように割合だけを決めても、根拠がなければ説明できません。専用回線、利用時間、アプリの利用記録、取引日数など、実態に合う資料を使い、同じ考え方を継続して適用します。
年間通信費120,000円について、暗号資産取引に直接必要な利用が20%であることを利用記録から明確に区分できる場合、検討対象となる金額は24,000円です。申告メモには「120,000円 × 20%=24,000円」と、20%の根拠を記載します。
料金プランに取引以外の通話、動画、SNS、家族利用が含まれる場合は、その全額を暗号資産の経費にはできません。別回線や専用端末だから必ず全額認められるわけでもなく、実際の用途で判断します。
「収入300万円」と所得区分の関係
国税庁の令和7年12月最終改訂FAQでは、暗号資産取引による利益は原則として雑所得(その他雑所得)です。その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合は、帳簿書類の保存があれば原則として事業所得、保存がなければ原則として雑所得(業務に係る雑所得)とする目安が示されています。
また、帳簿を保存すれば必ず事業所得になるわけではありません。営利性が認められない場合などは個別判断となります。所得区分が変わると必要経費の範囲や赤字の扱いにも影響するため、自己判断で事業所得へ変更しないでください。
必要経費を入れた所得計算の例
次は計算の順番を理解するための単純な例です。売却した暗号資産の譲渡原価を計算した後、売却手数料と、取引に直接必要なことを説明できる共通費を差し引きます。
| 項目 | 金額 | 確認点 |
|---|---|---|
| 売却による収入 | 1,200,000円 | 売却日時の約定金額 |
| 譲渡原価 | 850,000円 | 採用している評価方法で計算 |
| 売却手数料 | 5,000円 | 売却取引へ直接対応 |
| 損益計算ツール代 | 12,000円 | 暗号資産の所得計算だけに使用した前提 |
| 通信費の区分額 | 24,000円 | 年間120,000円のうち20%を明確に区分できた前提 |
| 所得金額 | 309,000円 | 1,200,000-850,000-5,000-12,000-24,000 |
この309,000円は所得税額ではなく、所得金額の例です。ツール代や通信費の直接性・区分を説明できなければ、その金額を差し引けるとは限りません。実際の税額は給与など他の所得、所得控除、住民税などを含めて計算します。
取引所のCSVに含まれる売買手数料を手入力でも差し引いていないか、ガス代が取得価額と必要経費の両方へ入っていないか、年払いツール代を複数年へ重複登録していないかを確認してください。
必要経費を整理する5ステップ
保存する書類と計算メモ
領収書があることは支払の証拠ですが、それだけで暗号資産の必要経費になるとは限りません。「何の収入を得るための支出か」「私用分をどう除いたか」を一緒に残すと、翌年も同じ基準で処理できます。
取引履歴と手数料をまとめて整理
複数の取引所・ウォレットの履歴を集め、暗号資産の損益計算と確定申告の準備を進められます。
ZEIbitで損益計算を始める暗号資産の必要経費に関するFAQ
仮想通貨の経費はいくらまで認められますか?
一律の上限はありません。暗号資産の所得を得るために直接必要か、私用分と区分できるか、金額と内容が合理的かで判断します。PCなどは取得価額に応じて減価償却が必要です。
スマホ代を50%経費にしてもよいですか?
50%という固定ルールはありません。暗号資産取引に直接必要な部分を、利用記録などから明確に区分できる場合に、その区分した金額を検討します。
パソコンは購入年に全額経費にできますか?
取得価額、使用可能期間、所得区分、青色申告の有無などで異なります。使用期間が1年以上で一定金額以上なら、原則として減価償却が必要です。
ガス代はすべて経費になりますか?
一律ではありません。購入・交換・送金・報酬請求など、どの取引に対応するかを確認します。損益計算ツールですでに取得価額や手数料へ反映されている場合は、二重計上を避けます。
税理士費用や損益計算ツール代は経費ですか?
暗号資産所得の計算・申告に対応する部分は対象になり得ます。他所得、法人、相続、私用の資産管理を含む場合は、契約内容や請求内訳を基に区分します。
所得が20万円以下なら経費の記録は不要ですか?
不要とは限りません。20万円は一定の給与所得者について所得税の確定申告が不要となる場合の条件で、住民税や別の理由で確定申告をする場合は扱いが異なります。所得金額を判断するためにも記録を残します。
暗号資産の赤字を給与から差し引けますか?
その他雑所得に区分される暗号資産取引の損失は、給与所得など他の所得との損益通算はできません。所得区分を含めて個別に確認してください。
公式情報・参考資料
村上 裕一(公認会計士・税理士)
監修者プロフィール公認会計士試験合格後、大手監査法人、メーカー経理財務、会計事務所を経て独立開業。仮想通貨・NFT・ブロックチェーンゲームを専門とする税理士として活躍。自らもSTEPNなどのブロックチェーンゲームなどをプレイし、多くの投資家の税務を支援している。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。所得区分、取引実態、契約、使用状況などにより税務上の扱いは異なります。個別の申告は税務署または税理士へご確認ください。

