※本記事は作成時点の法令・情報に基づいています。最新情報は国税庁Webサイト等でご確認ください。一般的な情報提供を目的としており、個別具体的な税務判断については税理士等の専門家にご相談ください。
法人が暗号資産を扱う際の税務は、個人が直面するものとは構造的に大きく異なります。この違いを理解することは、税務戦略を立てる上での第一歩となります。主に「税率」「損益の扱い」「評価方法」の3つの点で決定的な差があります。
個人の場合、暗号資産の利益は原則「雑所得」として扱われ、給与など他の所得と合算して計算されます。所得が上がるほど税率も上がる「累進課税」が適用され、住民税と合わせると最大で約55%もの税率になります。
一方、法人の利益は暗号資産取引も含め全て合算され、法人税が課されます。実効税率は約30%〜35%程度で、個人の最高税率より低く抑えられるのが特徴です。 さらに、損失が出た場合の取り扱いも法人に大きなメリットがあります。
特徴 | 個人 (Individual) | 法人 (Corporation) |
---|---|---|
所得区分 | 雑所得(原則) | 法人所得(全事業合算) |
適用税率 | 総合課税・累進税率(最大約55%) | 法人税率(実効税率約30-35%) |
損益通算 | 不可 | 可(全事業の損益と通算) |
損失の繰越控除 | 不可 | 可(欠損金を最長10年) |
期末の含み益 | 課税対象外 | 課税対象(原則、期末時価評価) |
法人税を正しく計算するには、「いつ利益が認識されるか(課税タイミング)」と「どうやって利益を計算するか(所得計算方法)」を理解する必要があります。
課税タイミングは主に以下の4つです。
利益を計算する上で核となるのが「取得価額」です。法人は、暗号資産の種類ごとに「移動平均法」か「総平均法」のどちらかを選択して計算します。
法人の暗号資産税務で最も大きな課題が「期末時価評価課税」です。これは、事業年度の終わりに保有している暗号資産をその時点の時価で評価し、帳簿価額との差額(含み益・含み損)をその期の利益または損失として計上する制度です。
最大の問題は、まだ売却していない未実現の利益(含み益)に課税される点です。 これにより、納税資金を確保するために、長期保有目的の暗号資産を売却せざるを得ないケースがあり、Web3事業者の成長を妨げる要因と指摘されてきました。
この問題に対応するため、近年、段階的な税制改正が行われています。
適用時期 | 時価評価の対象となる暗号資産 | 時価評価の対象外となる暗号資産 |
---|---|---|
改正前 | 活発な市場が存在する全ての暗号資産 | なし |
令和5年度改正後 | 上記から特定自己発行暗号資産を除く | ・特定自己発行暗号資産 |
令和6年度改正後 | 上記から特定譲渡制限付暗号資産(原価法選択時)を除く | ・特定自己発行暗号資産 ・特定譲渡制限付暗号資産(原価法を選択した場合) |
法人は、会計上のルール(企業会計基準)と税法上のルールの両方に従う必要があります。この2つのルールは必ずしも一致せず、特に前述の税制改正によってその「ズレ」が大きくなりました。 このズレを調整する手続きが「申告調整」です。
例えば、法人が「特定譲渡制限付暗号資産」を保有しているケースを考えてみましょう。
この場合、会計上の利益には1,000万円の評価益が含まれていますが、税務上の課税所得には含まれません。そのため、法人税の申告書(別表四)で、会計上の利益からこの1,000万円を差し引く(減算する)調整が必要になります。これを「益金不算入」と呼びます。 このように、会計と税務の違いを正しく理解し、申告調整を行うことが極めて重要です。
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公式サイトで詳しく見る暗号資産の取引は単純な売買だけではありません。マイニングやNFT、DeFiといった高度な取引には、それぞれ特有の税務上の論点があります。
暗号資産で大きな利益を得た個人投資家にとって「法人化」は重要な選択肢です。しかし、メリットとデメリットを総合的に判断する必要があります。
法人化を検討する一つの目安は、年間の利益が800万円〜900万円を超えるあたりです。 この水準を超えると、個人の所得税・住民税を合わせた税率が、法人税の実効税率を上回る可能性が高くなります。
メリット | デメリット |
---|---|
✅ 税率の上限が低い(約30-35%) | ❌ 期末時価評価課税のリスクがある |
✅ 損益通算ができる | ❌ 設立・維持コストがかかる(登記費用、税理士報酬など) |
✅ 損失を10年間繰り越せる | ❌ 事務負担が増大する(複雑な会計・申告) |
✅ 経費にできる範囲が広がる(役員報酬など) | ❌ 赤字でも法人住民税(均等割)が発生する |
法人化は単に税率だけで判断するのではなく、これらの要素を総合的に勘案し、長期的な事業計画に基づいて決定すべき重要な経営判断です。
日本の暗号資産税制は、グローバルな競争の中で変化し続けています。業界団体からは、個人の税制を株式などと同じ「申告分離課税(税率約20%)」にすることや、暗号資産同士の交換時には課税しないことなどを求める要望が毎年提出されています。
世界の法人税制と比較すると、日本の「期末時価評価課税」はグローバルスタンダードから見れば厳しいルールでした。 シンガポールやスイス、ドバイなどは、より有利な税制を整備し、多くのWeb3企業を惹きつけています。
近年の期末時価評価課税の緩和は、こうした海外への企業・人材流出を防ぎ、国際競争力を維持するための重要な一歩と言えます。 今後も、国内のWeb3産業を育成するため、さらなる税制改正が進むことが期待されます。
法人における暗号資産の税務は、個人と比べて低い税率や損益通算・繰越控除といった強力なメリットがあります。一方で、最大のハードルである「期末時価評価課税」の存在を忘れてはいけません。近年の税制改正でこのルールは緩和されましたが、その適用要件は複雑です。法人化を検討する際は、目先の税率だけでなく、設立・維持コストや事務負担、そして納税資金の確保といったデメリットも総合的に考慮することが成功の鍵です。暗号資産を事業に組み込む際は、必ず税理士などの専門家と相談しましょう。
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