2026年版・DeFi初心者向け

流動性提供の税金は、操作ごとに分けて考える

「預けた」「報酬を受け取った」「引き出した」を一つにまとめず、渡した資産、受け取った権利、確定した報酬を取引ごとに記録します。

01ポジション
LPトークン、NFT、預入資産の数量を確認。
02報酬
取引手数料と追加インセンティブを分ける。
03円換算
日時、数量、時価の出所、ガス代を保存。

流動性提供(Liquidity Provision、LP)は、DEXなどのプールへ暗号資産を提供し、取引手数料や追加報酬を得る仕組みです。税務では「LPだから一律にこの処理」と決めるのではなく、スマートコントラクトとのやり取りで何を渡し、何を受け取り、いつ利用できる状態になったかを確認します。

先に結論
国税庁は暗号資産同士の交換について損益計算を示していますが、個人のあらゆる流動性提供を一律に交換とする公式例示はありません。LPトークンやポジションNFTを受け取る設計、単に預託を示す設計、手数料がポジション価値へ反映される設計などがあるため、契約内容と実際の入出庫を残して個別に判断します。

流動性提供(LP)とは?

利用者が2種類または1種類のトークンをプールへ提供すると、ほかの利用者がスワップしやすくなります。対価として、スワップ時の手数料やプロトコル独自のインセンティブを得る場合があります。

ウォレット
Token A + Token B
数量・時価・ガス代を記録
⇄
流動性ポジション
LPトークン または NFT
持分・価格帯・未回収手数料

Uniswap公式によると、v2の持分はUNI-V2トークン、v3・v4の持分はNFTで表されます。また、v3・v4では未回収手数料をポジションから分けて回収できる一方、v2では手数料がプールへ加わり、ポジション価値へ反映される設計です。利用するプロトコルのバージョンによって、履歴の読み方が変わります。

確認項目代表的な形税務記録で見る点
持分の表現LPトークン、ポジションNFT、プロトコル内の残高受取資産・権利の名称、コントラクト、数量、取得日時
取引手数料ポジション価値へ自動反映、または未回収手数料として蓄積いつ数量が確定し、いつ回収・利用できたか
追加報酬ガバナンストークン、キャンペーン報酬付与、請求、着金の日時と円換算時価
引き出し預入時と異なる比率・数量のToken A / Bを受取受取数量、時価、ポジション権利の消滅・残存

流動性提供で確認する5つの取引

操作起きていること確認する考え方残す証拠
必要なトークンを準備ETHをUSDCへ交換するなど暗号資産同士の交換に当たる部分は、渡した資産の譲渡損益を計算交換前後の数量、時価、手数料、TxID
流動性を追加資産をコントラクトへ送り、LPトークンやNFTを受取元資産と別の暗号資産・権利との交換か、持分を示す預託かを契約と実態から判断預入数量、受取持分、コントラクト、利用規約、時価
取引手数料が増加自動で持分へ反映、または未回収残高として蓄積収入すべき時期と評価額を、権利確定・回収可能性・実際の会計処理から確認期間別の未回収額、回収日時、ポジション画面
追加報酬を受取UNIなど別トークンが付与・着金受取時点等の時価が収入と取得価額になるかを確認付与・請求・着金日時、数量、時価の出所
流動性を削除ポジションの全部または一部を解除し資産を受取受け取った資産と、消滅したLPトークン・権利の取得価額を対応させる解除割合、受取数量、時価、残存ポジション、TxID

国税庁FAQでは、暗号資産Aを暗号資産Bと交換した場合、Bの購入価額をAの譲渡価額として所得を計算します。しかし、LPトークンやポジションNFTが税務上どのような資産・権利に当たるかは、名称だけでは決まりません。画面の「Add liquidity」「Remove liquidity」というボタン名だけで課税・非課税を断定しないことが重要です。

税金計算のための6ステップ

1

ウォレットとチェーンを洗い出す

利用したアドレス、チェーン、DEX、プール、コントラクトアドレスを一覧にします。

2

TxIDを時系列に並べる

Approve、Swap、Add liquidity、Collect fees、Remove liquidity、報酬請求を分けます。

3

入出庫資産を対応づける

各取引で渡したトークン、受け取ったトークン・NFT、ガス代を記録します。

4

円換算時価をそろえる

取引日時の価格を同じ方針で円換算し、相場の出所とタイムゾーンを保存します。

5

交換・報酬・移動を分類する

暗号資産同士の交換、報酬収入、自分の資産移動など、経済的な実態で分類します。

6

年次集計と残高を照合する

期首・取得・売却等・期末の数量がつながるか確認し、不明取引を残したまま申告しません。

報酬の計算例

次は記録方法を理解するための単純な例です。実際の収入計上時期は、プロトコルの設計や報酬を利用できる状態、継続している会計処理により異なります。

内容数量円換算単価円換算額
回収したUSDC手数料5 USDC150円750円
回収したWETH手数料0.002 WETH500,000円1,000円
回収時のガス代0.0004 ETH500,000円200円
報酬の円換算合計1,750円

報酬の円換算額1,750円は、受け取ったUSDCとWETHの取得価額を管理する出発点にもなります。ガス代200円を必要経費または取得価額へどう反映するかは、どの取引に直接対応する費用かを確認します。支払ったETH自体の譲渡損益が生じるかも含め、処理方針を統一してください。

含み損益と所得を混同しない
ポジション画面の現在価値が増減しただけで、その全額が直ちに確定した所得になるとは限りません。一方、報酬を回収した、別資産へ交換した、ポジションを解除した場合は、実現した取引を確認します。

インパーマネントロスと税金は別に確認

インパーマネントロスは、流動性提供をせず2資産をそのまま保有した場合と比べて、ポジション価値が小さくなる可能性を示す運用上の概念です。税務上の損失額と同じではありません。税務計算では、実際に渡した資産、受け取った資産・報酬、それぞれの取得価額と円換算時価を使います。

リスク起こり得ること税務・記録上の注意
価格変動・インパーマネントロス預入時と引出時で資産比率・価値が変化単なる画面上の比較ではなく、実際の受取数量と取得価額を記録
範囲外ポジション設定価格帯の外では手数料を得られない場合報酬ゼロの期間もポジション履歴を保存
スマートコントラクト不具合や攻撃で資産を失う損失の事実、回収可能性、補償、警察・運営への連絡記録を保存
未検証トークン・ラグプル価格急落、流動性消失、売却不能時価ゼロを自己判断せず、客観的資料と処分・権利消滅の事実を確認
ガス代追加・回収・解除のたびに費用発生支払数量、円換算額、対応する取引を記録

確定申告前に保存するもの

  • ウォレット
    自分が管理する全アドレス
  • 利用先
    DEX、チェーン、プール、バージョン
  • コントラクト
    トークン・LP・NFTのアドレス
  • TxID
    承認、交換、追加、回収、解除
  • 数量
    送付・受取・報酬・ガス代
  • 時価
    円換算単価、時刻、取得元
  • ポジション
    期首・期末、価格帯、未回収手数料
  • 判断資料
    利用規約、公式ヘルプ、計算メモ

給与所得者の「20万円以下」は、所得税の確定申告が不要となる場合の一条件です。住民税の申告や、医療費控除など別の理由で確定申告をする場合、個人事業・副業の状況がある場合は扱いが変わります。「利益が20万円以下なら何もしなくてよい」と決めず、自治体や税務署へ確認してください。

履歴を集めた後の照合方法

ブロックエクスプローラーの履歴を取得しただけでは、確定申告用の計算は完成しません。スマートコントラクト内部では複数のTransferイベントが発生するため、同じTxIDに含まれる入出庫を一つの操作としてまとめます。ウォレットの画面、DEXのポジション画面、エクスプローラー、損益計算ツールの4つを照合すると、二重計上や見落としを発見しやすくなります。

よくあるミスなぜ起きるか確認方法
自分の別ウォレットへの移動を売却にする送付先アドレスの所有者を判定できない自分が管理するアドレス一覧を作り、内部移動として対応づける
Add liquidityを1行だけ見る同じTxIDで2資産の送付とLPトークン・NFTの受取が発生するイベントログを含め、同一TxIDの全入出庫を確認する
未回収手数料と回収済み報酬を重複計上するポジション画面の累計値とウォレット着金の両方を収入にする期首・増加・回収・期末の残高がつながるか照合する
LP解除時に元の預入数量を使う価格変動で受取資産の比率が変わっている解除Txで実際に受け取った各トークン数量を記録する
価格がないトークンを0円にする利用ツールが価格データを取得できない同時刻のDEX交換レート、取引所価格、合理的な代替資料を保存する
ガス代をまとめて二重に差し引くツール側で反映済みか確認せず手作業でも経費計上する取引別の処理結果と総額を照合し、採用ルールをメモする

年末時点では、ウォレットに残る通常の暗号資産だけでなく、LPトークン、ポジションNFT、未回収手数料、請求可能なインセンティブも棚卸しします。前年から継続するポジションは、前年末の数量・取得価額・未回収額と当年期首が一致するか確認してください。途中で別チェーンへブリッジした場合は、移動元と移動先のTxIDも対応づけます。

ツールの自動判定は確認の出発点
「Deposit」「Liquidity」「Reward」などのラベルが付いていても、税務上の結論が自動で確定するわけではありません。未対応プロトコル、独自ルーター、複数処理をまとめるコントラクトでは分類がずれることがあります。元データと期末残高が一致するまで確認します。

流動性提供の税金に関するFAQ

LPトークンを受け取った時点で必ず課税されますか?

一律には断定できません。元資産と別の暗号資産・権利を取得する交換なのか、預けた資産の持分を示す証票なのかを、プロトコルの契約と実態から確認します。

未回収の取引手数料も毎日計上しますか?

プロトコルごとに、手数料がポジション価値へ自動反映されるか、別残高として確定し回収できるかが異なります。権利確定と収入計上時期を税理士・税務署へ確認し、採用した処理を継続してください。

流動性を解除したときは何を計算しますか?

受け取った各資産の数量・時価と、消滅または減少したLPトークン・ポジション権利の取得価額を対応させます。預入時と異なる資産比率になるため、数量の照合が重要です。

インパーマネントロスはそのまま必要経費になりますか?

運用成績を比較する概念と、税務上の損失は同じではありません。実際の取引と取得価額に基づき計算し、比較画面のマイナス表示だけで必要経費にしません。

ガス代はすべて経費にできますか?

どの取引に直接対応する費用か、事業・業務との関連、支払った暗号資産自体の扱いを確認します。TxIDと円換算額を取引ごとに残してください。

損益計算ツールに接続すれば申告額が確定しますか?

自動分類できないコントラクトや、価格を取得できないトークンがあります。インポート後に入出庫、ポジション、報酬、残高を照合し、不明取引は根拠を確認して修正します。

DeFiの取引履歴をまとめて整理

ウォレット、取引所、複数チェーンの履歴を集め、取引の分類と損益計算、確定申告の準備を進められます。

ZEIbitで損益計算を始める

公式情報・参考資料

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。プロトコルの設計、取引実態、所得区分などにより税務上の扱いは異なります。個別の申告は税務署または税理士へご確認ください。

この記事は参考になりましたか?