暗号資産で損失が出ても、株式や給与の利益から自由に差し引けるわけではありません。2026年分の個人の取引では、暗号資産の所得は原則として総合課税の雑所得となり、株式の譲渡益や給与所得との損益通算はできません。

一方、同じ年の暗号資産取引で生じた利益と損失はまとめて計算できます。ほかの総合課税の雑所得との関係、翌年への繰越、将来の分離課税制度まで、混同しやすい範囲を整理します。

結論:何と相殺でき、何と相殺できないか

組み合わせ2026年分の一般的な扱い確認点
BTCの利益とETHの損失同じ年の暗号資産所得として集計できる売却・交換などで確定した損益を使う
暗号資産の損失と総合課税の雑所得雑所得の計算上、合計に反映される場合がある所得区分や必要経費の妥当性を個別確認
暗号資産の損失と給与所得相殺できない雑所得の赤字を給与から差し引けない
暗号資産の損失と株式の譲渡益相殺できない株式は申告分離課税の別枠
暗号資産の損失と国内FX相殺できない一定のFXは先物取引に係る雑所得等として別枠
暗号資産の赤字を翌年へ原則として繰り越せない現行の総合課税の雑所得を前提とする

ここでいう「損失」は、単なる値下がりによる含み損ではありません。売却・交換・決済などにより、その年の所得計算に反映される損失を指します。保有中に価格が下がっただけでは損失は確定していません。

同じ年の暗号資産同士なら損益をまとめる

2026年中にBTCで120万円の利益が確定し、ETHで70万円の損失が確定した場合、手数料などを省略すれば暗号資産取引の差引所得は120万円-70万円=50万円です。

01利益を集計

売却・交換・決済・報酬などを確認

02損失を集計

確定した損失と必要経費を確認

03年間で差引

同じ年の所得金額を計算

年末に損失を確定すれば必ず節税になる、とは限りません。取引手数料、価格変動、翌年の投資計画も影響します。税金だけを理由に取引を行わず、年間履歴を確認してから判断してください。

副業など、ほかの雑所得との関係

雑所得は、公的年金等、業務に係るもの、それ以外のものに分けて計算し、その合計額を求めます。暗号資産の損失と、原稿料などほかの総合課税の雑所得の利益が同じ年にある場合、雑所得の計算上、合計に反映される場合があります。

ただし、「副業で使った金額なら何でも赤字にできる」わけではありません。必要経費は収入を得るために直接必要な支出かを確認します。また、国内FXなど一定の先物取引は、名称に「雑所得」と付いていても申告分離課税の別枠であり、通常の暗号資産所得とは通算できません。

損失が残っても、翌年には原則繰り越せない

暗号資産の所得を総合課税の雑所得として計算し、その年の雑所得が赤字になっても、赤字を給与所得などから差し引くことはできません。翌年以後の暗号資産利益から控除する繰越控除も、現行の一般的な雑所得にはありません。

たとえば2026年に100万円の赤字、2027年に150万円の黒字となった場合、現行制度がそのまま適用される取引では、2026年の赤字を自動的に持ち越して2027年を50万円にすることはできません。

「事業所得にすれば通算できる」と自己判断しない

暗号資産取引の所得区分は、収入金額だけで機械的に決まるものではありません。国税庁FAQは、暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合について、帳簿書類の保存の有無などを示しつつ、事業として認められるかを含めて区分する考え方を示しています。

取引額や回数が多いという理由だけで事業所得に変更し、給与との損益通算や青色申告の繰越控除を使うのは避けてください。活動の営利性・継続性、人的・物的設備、帳簿、生活状況などを踏まえた判断が必要です。該当可能性がある場合は、申告前に税務署または税理士へ確認しましょう。

将来は「特定暗号資産」に20%分離課税と3年繰越

2026年度税制改正では、金融商品取引法等の改正を前提に、登録簿に登録された暗号資産など一定の「特定暗号資産」について、所得税15%・個人住民税5%の分離課税と、一定の要件による損失の3年間の繰越控除を設ける枠組みが決まりました。金商法等の改正法は2026年7月15日に成立しています。

成立2026年7月

金商法等の改正法が成立

施行政令で決定

公布から1年以内の範囲

税制施行年の翌年1月

対象取引への適用開始

この制度は2026年分の全暗号資産取引へ直ちに適用されるものではありません。財務省の大綱では、適用開始日は金商法改正法の施行日の属する年の翌年1月1日とされ、対象も特定暗号資産を暗号資産取引業者へ譲渡等した場合などに限定されています。対象銘柄、取引経路、確定申告書への添付書類などは、施行日と今後の公表資料を確認してください。

損益通算を確認する前にそろえる記録

  • 国内外の取引所、ウォレット、DEXを含む年間取引履歴
  • 売却・交換・決済・報酬取得時の数量と円換算額
  • 購入額、取得単価、取引手数料、送金手数料
  • 本人の口座・ウォレット間の送金を対応付けるトランザクションID
  • 副業などほかの雑所得について、収入と必要経費の根拠資料

取引所ごとに損益を完結させるのではなく、同じ種類の暗号資産について保有場所をまたいだ履歴をまとめます。暗号資産同士の交換も、手放した暗号資産の損益計算が必要です。

よくある質問

含み損を年末に計上できますか?

個人が保有する暗号資産の単なる値下がりは、通常、その年の確定した損失ではありません。売却・交換など取引の有無を確認します。

株式の利益100万円と暗号資産の損失100万円なら税金はゼロですか?

2026年分の一般的な個人取引ではゼロにはなりません。株式の譲渡所得等と、総合課税の雑所得である暗号資産所得は別に計算します。

将来の3年繰越は海外取引所やすべての銘柄にも使えますか?

一律にはいえません。制度上の「特定暗号資産」、取引相手、適用開始日、申告要件を満たす必要があります。施行後の国税庁・金融庁資料で確認してください。

参考資料

村上 裕一氏

この記事の監修者

村上 裕一(公認会計士・税理士)

公認会計士試験合格後、大手監査法人、メーカー経理財務、会計事務所を経て独立開業。仮想通貨・NFT・ブロックチェーンゲームを専門とする税理士として活躍。自らもSTEPNなどのブロックチェーンゲームなどをプレイし、多くの投資家の税務を支援している。

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