アイキャッチはAI生成のイメージで、実際の統計資料や取材写真ではありません。

結論からいうと、暗号資産のガス代は、支払った分をすべて同じ年の「必要経費」にするものではありません。購入に直接必要だったガス代は取得価額に含める考え方、売却に直接必要だったガス代は売却時の費用として差し引く考え方が基本です。自分のウォレット間の送金、NFT、ブリッジ、DeFiでは、何のために支払ったかを取引ごとに確認します。

ガス代とは、ブロックチェーン上で送金やスマートコントラクトの処理を実行するために支払うネットワーク手数料です。国税庁の公表資料は「ガス代」という名称で一律の取扱いを示していません。この記事では、国税庁が示す購入手数料と必要経費の原則に照らして、個人の損益整理で迷いやすい場面を分けて説明します。

この記事の要点

  • ガス代は一律に必要経費とせず、購入・売却・送金・NFT・DeFiなど、支払った目的に沿って整理します。
  • 購入に直接必要な手数料は取得価額に加えるという国税庁の取扱いがあります。ただし、個々のガス代がこれに当たるかは取引内容によります。
  • 売却の際の手数料や、売却等に直接必要な費用は必要経費の対象になり得ます。
  • 日時、取引ハッシュ、支払数量、円換算額、目的を残し、二重計上を避けることが重要です。

ガス代の整理は「何のための支払いか」で決める

国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」の「1-5 暗号資産の取得価額」では、購入のために要した手数料は購入代価に加算すると説明しています。また「2-3 暗号資産の必要経費」では、譲渡原価、売却時の手数料、売却等に直接要した費用を必要経費の例に挙げています。

ここから分かるのは、手数料を独立した一つの箱にまとめるのではなく、対応する取引に結び付けて考える必要があるということです。以下の表は、公式資料の原則をもとにした編集上の整理であり、国税庁がガス代の全ケースを個別に列挙したものではありません。

ガス代を支払った場面 損益整理の出発点 注意点
暗号資産の購入・取得 取得のために直接必要なら、取得価額に含める考え方 同じ金額を必要経費にも入れる二重計上をしない
暗号資産の売却 売却に直接必要なら、売却時の費用として整理する考え方 売却取引との対応関係を記録する
自分のウォレット間の送金 送金目的を確認し、独立した記録として保留 支払っただけで自動的に当年の必要経費とはしない
NFTの購入・ミント NFT取得に直接必要なら、取得に要した費用として検討 NFTの所得区分や取引実態で扱いが変わる
DeFiのスワップ・LP・ブリッジ ガス代より先に、元の取引の内容を分類する 交換、預入れ、権利取得などを一括処理しない
失敗したトランザクション 成功取引と分けて記録し、個別に判断 資産を取得していないため、取得価額へ機械的に加えない

出典:国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」1-5、2-3を基にZEIbit JOURNALが整理。ガス代そのものについての一律の公式回答ではありません。

購入時は取得価額、売却時は直接費用を確認

国税庁FAQの例では、暗号資産を200万円で購入し、購入手数料550円を支払った場合、取得価額は200万550円です。購入のために直接要した費用を取得価額へ加えるという考え方です。

オンチェーンで暗号資産やNFTを取得するためにガス代を支払った場合も、まずはこの購入手数料の考え方に当てはめられるかを確認します。ただし、複数処理をまとめた取引や、取得前の承認だけに使ったガス代などは事実関係が異なります。「購入に使ったガス代だから必ず取得価額」と断定せず、取得との直接性を確認してください。

売却側については、国税庁FAQが「売却の際に支払った手数料」と「売却等に際し直接要した費用」を必要経費として示しています。DEXでの売却や交換に直接必要なガス代は、この原則に照らして売却時の費用として検討できます。

パソコン、スマートフォン、通信費など、ガス代以外の支出は扱いが異なります。業務との直接性や家事分との区分については、仮想通貨の必要経費の整理も参照してください。

簡単な計算例

次の例は、考え方を確認するための単純化した例です。実際には、同じ銘柄の年間取引を総平均法または移動平均法で計算するため、この1件だけで年間所得が確定するわけではありません。

  • 2026年5月10日:暗号資産Aを20万円で取得
  • 取得に直接必要なガス代:1,200円
  • 2026年9月20日:暗号資産Aを24万円で売却
  • 売却に直接必要なガス代:1,500円
  • いずれも取引時点の円換算額で記録済み

この前提で、取得時ガス代を取得価額へ加え、売却時ガス代を直接費用として扱う場合の計算は次のとおりです。

24万円 − 20万1,200円 − 1,500円 = 3万7,300円

取得時ガス代1,200円を取得価額と必要経費の両方へ入れると、費用を二重に差し引くことになります。なお、ガス代をETHなどの暗号資産で支払った場合は、その数量と支払時の円換算額も残します。手数料として払い出した暗号資産自体の損益認識まで含め、資料に明示されていない場面は税務署または税理士へ確認してください。

取得価額の計算方法は、総平均法と移動平均法の違いも参照してください。

送金・NFT・DeFiは一括で処理しない

自分のウォレット間の送金

取引所から自分のウォレットへ移すなど、所有者が変わらない送金では、ガス代だけを見て処理を決めないことが大切です。将来の売買に備えた移動なのか、特定の取引に直接付随するのかで整理が変わります。送金時点では独立した記録として残し、年末に取引目的と対応関係を確認すると安全です。

NFTの購入・ミント

国税庁のNFT・FTに関する案内は、財産的価値を持つNFTの取引が所得税の対象になり得ること、所得区分は取得理由や譲渡の実態で変わることを示しています。NFTの取得に直接必要なガス代は取得費用として検討しますが、発行、購入、販売、ゲーム利用などを同じ扱いにはできません。NFT一次販売については、NFTミントの税金で取引全体を確認してください。

DeFi・ブリッジ・流動性提供

DeFiでは、一つの画面操作に見えても、トークン承認、スワップ、預入れ、LPトークンの受取り、報酬請求など複数のトランザクションが発生します。まず各処理が資産の交換なのか、預入れなのか、権利の取得なのかを整理し、その後にガス代を対応させます。

ブリッジの仕組みと税金や、流動性提供(LP)の税金も合わせて確認すると、元の取引を分類しやすくなります。

失敗したトランザクションも記録する

ブロックチェーンでは、処理が失敗してもガス代だけ支払われることがあります。資産を取得・売却できていないため、成功した購入や売却のガス代と同じ方法で機械的に処理するのは避けます。

失敗取引について国税庁の暗号資産FAQに具体的な一律ルールはありません。トランザクションハッシュ、失敗理由、試みた取引、円換算額を残し、所得を得るために直接必要だったかなどを個別に確認します。金額が大きい場合や反復している場合は、税務署または税理士への確認が必要です。

最低限残したい8項目

  1. 取引日時とタイムゾーン(UTCか日本時間か)
  2. トランザクションハッシュ
  3. 利用したウォレット、チェーン、サービス名
  4. 取引の目的(購入、売却、送金、承認、ブリッジなど)
  5. ガス代として支払った銘柄と数量
  6. 取引時点の円換算額、参照価格、取得時刻
  7. 対応する資産の銘柄、数量、円換算額
  8. 成功・失敗の別と、関連する画面・CSV・ウォレット履歴

ウォレット履歴の集め方は、MetaMaskの取引履歴と損益計算も参考になります。

よくある間違い

  • 年間のガス代をまとめて全額必要経費にする
  • 取得価額へ含めたガス代を、もう一度必要経費へ入れる
  • ガス代として支払ったETHなどの数量をウォレット残高から消すだけで、円換算記録を残さない
  • 承認、失敗、ブリッジ、スワップを一つの取引にまとめる
  • 取引所CSVだけで、ウォレットやブロックチェーン履歴を保存しない

まとめ

ガス代の損益整理では、「いくら払ったか」より先に「何のために払ったか」を確認します。購入に直接必要な費用は取得価額、売却に直接必要な費用は売却時の必要経費として検討し、送金、NFT、DeFi、失敗取引は元の取引内容に沿って分けます。

国税庁はガス代の全ケースを個別に示していません。この記事は2026年10月16日時点の公表資料を基にした一般的な整理であり、個別の税務判断ではありません。取引構造が複雑な場合、金額が大きい場合、所得区分に迷う場合は、記録をそろえて税務署または税理士へ確認してください。

出典