仮想通貨(暗号資産)の利益を申告していなかったことに気づいても、まず必要なのは取引記録を集め、正しい所得と税額を確認することです。申告漏れがあったからといって、すべてが直ちに「脱税」や刑事事件になるわけではありません。申告状況に応じて、期限後申告または修正申告を進めます。
仮想通貨の税金を申告しなかったら、まず何が起きる?
暗号資産を売却したときだけでなく、暗号資産同士を交換したときや、暗号資産で商品を購入したときにも利益が生じる場合があります。所得税の申告が必要なのに手続きをしていなければ、本来の税額に加え、状況に応じて加算税や延滞税が課されることがあります。
| 現在の状況 | 主な手続き | 追加で生じ得るもの |
|---|---|---|
| 申告期限内で、まだ提出前 | 利益を再計算して期限内申告 | 期限内に正しく申告・納付すれば、通常は申告遅れに対する加算税は生じません |
| 申告が必要だったが未提出 | 期限後申告 | 無申告加算税、延滞税など |
| 申告済みだが税額が少なかった | 修正申告 | 過少申告加算税、延滞税など |
| 所得を隠す、記録を偽るなどがあった | 事実関係を整理し、早めに専門家へ相談 | 重加算税の対象となる可能性。悪質な事案では刑事手続きに進む場合もあります |
単純な計算ミスや取引の見落としまで一律に刑事上の脱税と判断されるわけではありません。一方、隠蔽や仮装が認められると、通常の加算税より重い重加算税の対象となる可能性があります。自己判断で記録を作り替えず、残っているデータをそのまま集めることが重要です。
暗号資産で起こりやすい5つの申告漏れ事例
日本円に換えた取引だけを集計した
BTCをETHへ交換するなど、暗号資産同士の交換でも、交換時点で利益が確定する場合があります。
複数の取引所・ウォレットを合算していない
国内外の取引所、DEX、個人ウォレットに分かれた取引は、年分ごとにまとめて所得を計算します。
ステーキングやエアドロップを見落とした
報酬として暗号資産を受け取った時点で、所得計算が必要になる場合があります。受取日時、数量、時価を確認します。
入出金額をそのまま利益だと考えた
売却代金や日本円の出金額と利益は同じではありません。売却価額等から取得価額と必要経費を差し引いて計算します。
自己ウォレットへの移動を売買として取り込んだ
自分の口座間の送付は通常の売却とは異なります。重複取引や送付手数料も確認し、二重計上を防ぎます。
税務調査では暗号資産取引も確認されている
国税庁が公表した令和6事務年度の調査状況では、暗号資産等取引を行う個人への実地調査は613件でした。1件当たりの申告漏れ所得金額は2,538万円、追徴税額は745万円で、所得税の実地調査全体より高い水準です。
これらは調査を受けた事案の平均であり、暗号資産を取引した人全体の平均ではありません。ただし、「海外取引所だから確認されない」「ウォレットだけなら申告不要」とは考えないほうが安全です。国税庁は資料情報を収集・分析して調査に活用しています。
また、暗号資産等報告枠組み(CARF)により、2026年から暗号資産交換業者等が対象取引の特定手続きを行い、2027年から非居住者に関する取引情報の税務当局間の自動交換が始まります。これは国内利用者の全取引が一律に自動報告されるという意味ではありませんが、国境を越えた情報連携が進んでいることは押さえておきましょう。
本税以外にかかる可能性がある税金
| 名称 | どんなときに問題になる? | 押さえたい点 |
|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 期限内申告はしたが、申告税額が少なかった場合 | 税務調査の通知前に自主的に修正したかなどで取扱いが変わります |
| 無申告加算税 | 期限までに必要な申告をしなかった場合 | 自主的な期限後申告か、調査後の申告かなどで取扱いが変わります |
| 重加算税 | 課税の基礎となる事実を隠蔽・仮装した場合 | 単なる計算ミスとは区別され、事実関係に基づいて判断されます |
| 延滞税 | 法定納期限までに納付できなかった場合 | 原則として法定納期限の翌日から完納日までの日数に応じます |
申告漏れに気づいたら行う4ステップ
- STEP 1
取引記録を集める
取引所の年間取引報告書、CSV、ウォレット履歴、銀行入出金、購入・売却・交換・報酬の記録を集めます。取引所から取得できる期間も確認します。
- STEP 2
年分ごとに所得を再計算する
一つの取引所だけでなく、すべての口座とウォレットを対象にします。取得価額の計算方法や年をまたぐ残高も確認します。
- STEP 3
期限後申告または修正申告をする
未申告なら期限後申告、税額を少なく申告していたなら修正申告が基本です。法定申告期限前なら、正しい内容で改めて期限内申告します。
- STEP 4
納付し、今後の記録方法を整える
納税が一時に難しい場合も放置せず、所轄税務署の徴収担当へ早めに相談します。要件を満たせば猶予制度を利用できる場合があります。
推測だけで数字を作らず、取引所への再発行依頼、ブロックチェーンの履歴、銀行記録などを突き合わせます。復元方法や評価方法に判断が必要なら、暗号資産税務に詳しい税理士へ相談してください。
再計算に必要な記録チェックリスト
- 国内・海外の取引所から取得した年間取引報告書やCSV
- 売買、暗号資産同士の交換、商品購入の日時・数量・価格
- ウォレットアドレス、送受信履歴、送付手数料
- ステーキング、レンディング、マイニング、エアドロップ等の受取記録
- NFTやDeFi取引を含むオンチェーン取引の内容
- 暗号資産取引に直接対応する必要経費の領収書・根拠
- 過去の確定申告書、暗号資産の期首数量・取得価額
よくある質問
利益が20万円以下なら、何もしなくてよいですか?
「20万円」は暗号資産だけに共通する非課税枠ではありません。年末調整済みの給与所得者など、一定の人が所得税の確定申告を省略できる要件です。医療費控除などのため確定申告をする場合は、20万円以下の所得も含めます。住民税の申告が別途必要になる場合があるため、自治体の案内も確認してください。
海外取引所の利益も申告が必要ですか?
日本の居住者は、原則として国内外で得た所得が課税対象になります。海外取引所を利用していることだけを理由に申告対象外にはなりません。
数年前の申告漏れに今気づきました。どうすればよいですか?
対象年分の記録と申告書を集め、年ごとに再計算します。対応できる期間や手続きは事情により異なるため、所轄税務署または税理士へ早めに相談してください。
税金を一括で払えません。申告しないほうがよいですか?
申告と納付の相談は分けて考えます。無申告のまま放置せず、申告手続きを進めたうえで税務署へ相談してください。一定の要件を満たす場合、原則1年以内の猶予が認められることがあります。
複数の取引所・ウォレットをまとめて確認
暗号資産の損益計算を、後回しにしない
ZEIbitなら取引データをまとめ、申告に必要な損益計算を進められます。まずは手元の取引履歴がそろっているか確認しましょう。
ZEIbitで損益計算を始める参考にした公的資料
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書」
- 国税庁「令和6事務年度における所得税及び消費税調査等の状況」
- 国税庁「確定申告を間違えたとき」
- 国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」
- 国税庁「暗号資産等報告枠組み(CARF)」
- 国税庁「納税に関する総合案内」

この記事の監修者
村上 裕一(公認会計士・税理士)
公認会計士試験合格後、大手監査法人、メーカー経理財務、会計事務所を経て独立開業。仮想通貨・NFT・ブロックチェーンゲームを専門とする税理士として活躍。自らもSTEPNなどのブロックチェーンゲームなどをプレイし、多くの投資家の税務を支援している。
ホームページはこちら

