暗号資産で「1億円」と聞いても、保有資産の時価が1億円なのか、年間の確定利益が1億円なのかで税金の話は変わります。個人が保有する暗号資産の値上がりだけなら、原則として売却益はまだ生じません。売却・交換などで年間所得が1億円となった場合でも、「最高税率55%を1億円に掛ける」計算は誤りです。

この記事では、2026年時点の一般的な個人取引を想定し、課税所得をちょうど1億円と置いた概算は約5,105万円になることを、前提と計算過程を示して説明します。実際の税額は他の所得・控除・居住地・取引内容で変わるため、この数字をそのまま納税額と考えないでください。

「1億円」のどの金額を指すか、最初に分ける

よくある「1億円」その時点の考え方次に確認すること
保有する暗号資産の時価が1億円個人は原則、値上がりだけでは売却益を計上しない取得価額と保有数量
1億円で売却した売却額がそのまま所得ではない取得価額、手数料、他の取引
年間の暗号資産所得が1億円他の所得・所得控除等を反映して課税所得を求める給与等、控除、税額控除、居住地
課税所得が1億円所得税の速算表を使って税額を計算できる復興特別所得税、住民税等

取得価額が3,000万円の暗号資産を1億円で売り、手数料を省略したなら、この1回の取引による差額は7,000万円です。「売却額1億円」と「利益1億円」は違います。同じ通貨を複数回取得している場合は、届出・選択した評価方法に従って譲渡原価を求めます。国税庁の暗号資産の計算書を使い、年間の取引を整理しましょう。

課税所得1億円なら税金はいくら?2026年の概算

次は日本の居住者・一般的な個人の暗号資産取引・課税所得1億円と仮定した説明用の計算です。所得税の税額控除はなく、住民税の課税所得も同額、所得割を10%と仮定します。住民税の均等割・森林環境税や自治体独自の加算、社会保険料、個別の控除などは含めません。

項目計算概算額
所得税1億円 × 45% − 479万6,000円4,020万4,000円
復興特別所得税所得税額 × 2.1%84万4,284円
住民税の所得割1億円 × 10%1,000万円
合計上記3項目の合計5,104万8,284円

所得税の45%は、課税所得が4,000万円以上の区分に使う限界税率です。速算表の控除額を差し引いて計算するため、課税所得全体に45%の所得税がかかるわけではありません。この例の3税目を課税所得1億円で割った割合は約51%です。実額の計算には国税庁「所得税の税率」と住民税の自治体資料を確認してください。

日本円を受け取らなくても計算が必要な取引

課税対象となる取引は日本円への売却だけではありません。暗号資産同士の交換では手放した通貨、暗号資産での買い物では支払いに使った通貨について損益を計算します。報酬を受け取った場合も、取得時と後日の売却・交換時を分けて整理します。DeFiの処理は仕組みによって異なるため、すべてを同じ取引として扱わないでください。

01取引を集める

取引所・ウォレットの入出金と交換を時系列に整理

02円換算して所得を求める

取得価額、売却・交換時価、手数料を照合

03税額と資金を確認

他の所得・控除を含めて試算し、支払原資を確保

日本円に換金していないのに大きな所得が生じることもあります。後から価格が下落しても、先に成立した取引の記録が消えるわけではありません。暗号資産同士の交換も参照してください。

法人化・経費・損失確定をどう考える?

法人化:個人の過去の利益を、後から設立した法人の利益へ移すことはできません。会社の税負担だけでなく、役員報酬等を個人で受け取るときの税金、設立・維持費用、法人保有の暗号資産の期末評価も比較します。「1億円なら必ず法人化が得」という基準はありません。詳しくは法人化の比較と設立前の確認点へ。

必要経費:取引手数料や取得価額を整理します。PC・通信費・書籍・セミナー等は、すべて自動的に経費になるわけではなく、所得区分や所得を得るための必要性、私用との区分で判断します。必要経費ガイドで記録方法を確認してください。

損失確定:含み損のある通貨を売ればその取引の損益が確定しますが、雑所得の損失は原則として給与所得と損益通算できません。買い戻しによる手数料・価格差や将来の取得価額も変わるため、売ってすぐ買い戻せば必ず節税になるわけではありません。投資判断と税務判断を分けて考えましょう。

暗号資産の税率は今後20%になる?

令和8年度税制改正の大綱では、一定の暗号資産取引について申告分離課税への見直しが示されています。ただし、対象となる暗号資産や適用時期には条件があり、2026年の取引が一律20%になると決めつけることはできません。申告する年分の適用法令と対象取引を、国税庁・金融庁の最新資料で確かめてください。この記事の1億円の試算は、上記の総合課税の前提です。

よくある質問

1億円の含み益があるだけで、約5,105万円の税金がかかりますか?

いいえ。個人が保有する暗号資産の値上がりだけなら、原則として売却益は生じません。約5,105万円は「課税所得が1億円」などの条件を固定した計算例であり、含み益にそのまま当てはめる数字ではありません。

1億円で売却したら、税金は約5,105万円ですか?

売却額だけでは分かりません。取得価額、売却手数料、他の取引の損益を反映して所得を求め、さらに他の所得・控除を確認します。

所得が大きい年は、いつ資金を準備すればよいですか?

年間損益を早めに集計し、所得税の申告・納付、翌年度の住民税や、該当する場合の予定納税を見据えて資金を確保します。納付時期や税額が不明なら、取引履歴と試算結果を持って税理士に相談してください。

参考資料